さて、引き続き武器の装備品についての考察をしたいと思います。
武器をいろいろ見ていくと奥深いものがありますが、武器を整備する道具にも注目するものがあります。
今後は、工具類にも目を向けていきたいと思います。
第21巻第91話 ガビが投げた手榴弾
マーレ軍と中東連合軍の戦闘中に、戦士となるべく訓練を受けているガビが投げる手榴弾についてです。
これは、以前考察した調査兵団が投げた手榴弾とは形が違います。マーレ軍の手榴弾は、長い柄のついた形をしています。
これは、第1次世界大戦時のドイツ軍が使用していた、M24型柄付手榴弾に似ています。
この柄付手榴弾は、第2次世界大戦中にも使われましたが、持ち運びや格納が「かさばる」ということで、パイナップル型や卵型に改良されてきました。いわゆる「ブツブツ」型ですね。
この柄付手榴弾は、旧ソ連でも使用されていたようですが、現在は無くなっているようです。日本でも旧日本陸軍が、九七式柄付手榴弾として採用していました。
・柄付手榴弾の特徴
柄付手榴弾は、丸型や卵型のものより飛距離を少しかせぐことができることと、命中精度が少し良くなるようです。写真は、ドイツ陸軍のM24型柄付手榴弾です。
また、丸型や卵型のように、ころころと転がることがないので、一時保管する場合は利点があったようです。
第1次世界大戦のドイツ軍の写真などを見ると、望壕の周りに並べて置き、すぐ使用できるようにしている様子も伺えます。これが卵型や丸型だと、ころころと転がって危険ですね。
この柄付手榴弾は、ドイツ、フランス、オーストリア、旧ソ連などで使用されました。また、ドイツ製の武器を使っていた中国でも使用されたようです。
・柄付手榴弾の変化
時代が変化してくると、戦闘の状況が変わり、歩兵が戦っていたフィールドが、野原や山から市街戦が主になっていきます。
家やコンクリートの建物やビルに立てこもる敵を攻撃するためには飛距離よりも、持ち運びや正確性を更に追及するようになったため、柄付手榴弾は衰退していきました。
・ヨーロッパ戦線から中国大陸へ
柄付手榴弾は、主に使用されたのがヨーロッパ戦線でした。
日本と当時の中国が戦った日中戦争でも、中国軍が使用していました。主にドイツ製でしたが、一部フランス製もあったようです。
進撃の巨人のストーリーは、ドイツ、フランスを背景にしたものと考えられるので、手榴弾もヨーロッパでの主流の物が描かれたのでしょう。
・束ねた柄付手榴弾の威力
ガビは、柄付手榴弾を束ねて使用しました。実際に第2次世界大戦でも、束ねて戦車に対しての攻撃などにも使用していたようですが、その効果は薄かったようです。
束ねて使うことは少なったようですね。
第23巻第91話 連合軍の装甲列車
・鉄道と装甲列車の登場
第23巻の91話では、マーレ軍と中東連合軍の戦闘で、中東連合軍が鉄道を利用した装甲列車が登場します。
この23巻では、一挙に連合軍やマーレ軍の近代的な軍装備品が登場します。装甲列車は、列車に大砲や武器を装備し、鉄道及び輸送ルートを防御するために開発されたものです。
特に第二次世界大戦時のドイツ陸軍が大型のものを開発していました。
日本陸軍も中国大陸で機関車と装甲列車を組み合わせものを多数運用していました。
写真は、日本陸軍の94式装甲列車と7cm高角砲を組み合わせた装甲列車です。
その中で使用された機関車の一部に、「ミカサ」型改造機関車というタイプがあったようです。
調査兵団の「ミカサ」の名前は、ここからきているのでしょうか・・・。
第23巻の戦闘シーンでは、前後2台の砲塔列車を真ん中の機関車が前後に移動するするタイプのようですね。
機関車に対する装甲は、よく見えませんが、大戦中の機関車の装甲には一番苦労したようです。またこの鉄道線路の軌道の軌条幅はわかりませんが、あまり大きくない軌条幅のようです。
・装甲列車の破壊力
装甲列車には、その用途によってさまざまな武器が装備されていました。
第23巻では、5インチ(12.7cm)砲程度の大砲が装備されているようです。5インチ砲であれば、約7km~10km先の敵を砲撃することができます。
また、速射砲(短い時間で弾をたくさん撃てる。)であれば、航空機なども攻撃できます。
さらに、大砲も1基ではなく、数個を連結したものや、各列車に機関銃などを装備したものなど、その種類はひじょうに多いです。装甲列車は、鉄道を利用した重装備の攻撃兵器と言えます。
写真は、ドイツ陸軍の巨大列車砲です。砲塔が旋回できないため、カーブのついた線路を移動して、砲撃する方向を変えていました。
・装甲列車を手榴弾で破壊できるか?
装甲列車を破壊する前に、単純に線路を破壊すれば、その攻撃能力はなくなります。
しかし、線路を破壊するのは容易ではありません。相当な爆薬を使用しなければ、破壊できないくらい頑丈にできています。
また、通常、平地での鉄道の復旧は比較的短時間でできることが、第二次世界大戦などで実証されています。
ですから、もし、長時間輸送力を破壊するのであれば、橋や狭い谷間などを狙って爆破することが効果的です。
ガビが柄付手榴弾数個で装甲列車の転覆させ破壊する場面がありますが、あの程度の爆薬では、砲塔部分や鉄道を破壊することは多分無理ではないか・・・と思います。
中東連合軍側がこのような装甲列車を持っているという想定は、なかなかのアイデアだと思います。
・現代の装甲列車
現代戦での装甲列車は、あまり開発されていません。
その理由は、自分の国が戦場となることを想定していないことや、航空機が発達したことからその役目は薄くなったことが理由です。
最近のニュースでは、列車に武器を搭載して、攻撃武器として考えているのがロシアです。以前から貨物列車を改造し、ICBMを発射できるようにした車両も開発されています。
また、近年では、貨物列車に輸送用標準12mメートルコンテナを改造した巡航ミサイルを4基設置したものを搭載し運用するものを配備しています。
この「Club-K」と呼ばれる巡航ミサイルコンテナセットは、鉄道だけではなく、コンテナ船、トレーラーなどでも運搬、発射できることから、ひじょうに危険な兵器と恐れられています。
見た目は普通の「コンテナ」にしか見えないのですから。
これは装甲列車や砲塔列車とはカテゴリは違いますが、鉄道を利用した兵器の一部と考えていいと思います。
2022.2追記
このロシアのミサイル搭載列車をコピーした北朝鮮が、ミサイル発射試験を実施しました。
トンネルに隠しておき、いざとなったら発射位置まで走行し、発射する。
現代でも十分実用に値する兵器です。
使われないことを祈るばかりです。